6月24日はフィレンツエの守護聖人サン・ジョバンニ。
そして、この日はフィレンツェの祝日にあたり、古式サッカーゲームの最終戦の日でもある。
1年でフィレンツェが一番エネルギッシュな日で、色々な意味で暑い日だ。
このフィレンツェ古式サッカー、イタリア語では “ Calcio Storico Fiorentino “(カルチョ ストリコ フィオレンティーノ)と言う。
16世紀に起源をもつこのスポーツ、軍人が戦のない時期に、体を鍛える為にと生まれたゲームだとか。
500年も歴史のあるスポーツというわけだ。
フィレンツェの中心街を4つのチームに分けて、トーナメント式に戦う。
ちなみにチームは色で分けられている。赤、白、青、緑。
そして、今でも中世貴族の衣装を身につけてプレーする。
“古式サッカー”、”中世の衣装”と言葉だけを想像すると、日本の蹴鞠のように穏やかなスポーツを想像してしまうが、そんな優雅なものではない。
果たして、これをスポーツと呼んで良いのだろうか。
以前、このイヴェント機関の担当者へインタビューをしたことがある。
担当者が言うには、
“ルールは相手ゴールへボールを入れるだけ。(ゴールと言っても、ただの壁だが。)手を使っても、足を使っても何でも良い。 以上。”
(えっ・・・)
つまり、殴っても、蹴っても、首を締めても良しということだ。
実際に過去の試合で、選手が相手チームの選手の耳に噛み付いて、耳から大出血なんてこともあったのだとか。
(恐ろしい・・・)
厳密にはルールはあるのだが、ルールの線引きがイマイチ不明だ。
実際、試合を見てみると、ボールとは全く関係のない場所で、取っ組み合いが始まっていて、ボクシングのフォームを構えたりしている。
(あれっ、これって何の試合?ちなみに、主審は黒い衣装を着た人。)
出場する選手のほとんどが、実はプロの格闘技家、元受刑者、その他ラクビーなどのスポーツ選手だったりする。つまり、” 血の騒ぐ野郎たち ” の戦いの場なのだ。
どんな試合か、何となく想像できましたか?
要するに、団体格闘技マッチを見ているような感じなのだ。
こっちでは、ボクシング、あっちでは空手、向こうではレスリングといった具合に。
一応審判もいる。救急隊員も常に10人くらいフィールドに入って、選手にお水を飲ませたり、色々なケアをしている。つまり、けが人が出ることが前提の試合だ。
黄色い服を着た人が救急隊員で下敷きになっている選手に水を飲ませている。
ちなみに、今年の青組と白組の予選では、青組選手の一人が審判の指示に従わず、審判を襲った。それが発端となり、両チームゲームではなく本格的な乱闘になった時点で、警察が中断に入り、ゲームオーバーとなってしまった。このまま続けて、もし万が一の事が起こった場合、主催者も責任を取れないからだ。
得点も、1点、2点とカウントする時もあれば、0,5点の時もある。
(なぜだー!)
もっと不可解なのが、点数が増えたり、減ったりするのだ。
(・・・。)
全くもって、理解しがたいスポーツである。
毎年優勝チームには、キアニーナ牛がプレゼントされる。
そして、勝者を讃える晩餐会では、優勝チームが舞台の上でキアニーナ牛を食べる。
それだけではなく、敗者も招かれ、舞台の下で勝者と夕食を共にする。
その意図は、共に戦った仲間をねぎらうと言う意味があるらしい。
が、果たして、敗者はどんな気持ちで夕食を口にするのだろうか。
勝者を上に見上げて、負かすことのできなかった相手から振舞われてた食事を食べる・・・。
さて、今年の優勝者は、あの青組と因縁の対決をして幸運にも勝ち抜いた白組。
50分間の白熱した試合だった。
会場は歓声に包まれる。
狂気と興奮の空間に次第に引き込まれ、
選手のひとつひとつの動きに一喜一憂する。
残酷さの中に垣間見れる、輝き、美しさみたいなものを感じた。
500年も続く伝統的スポーツ。
カルチョストーリコは今でも健在だ。
厳しい真夏の直射日光のもと、白熱した男たちの戦いが終了。
まるで、戦を勝ち抜いた戦士だ。
そして、試合の興奮がまだ醒めやらぬ夜の10時、ドン、ドドーンと花火大会が始まる。
打ち上げはミケランジェロ広場からだ。
これでフィレンツエの夏が本格的にスタート。
ビーチに、野外オペラ・コンサートとイタリアの夏の始まり、始まり・・・。
写真番外編
ボールをよこせっ!と平手打ちっ!と同時に後ろから襲われる。
2人に脅され、もう逃げられないっ!
戦いに欠かせないもの。マウスピース。
血だらけでも戦うファイト魂。
一見優雅な画だが、ボールはペンキで赤に塗っただけ。
最終戦の入場パレードでは、白組は白いカーネーションを持って入場。観客へ向けてその花を投げるという粋な演出。
青組が入場してきた時には、白組陣地からペットボトルが投げ込まれ、ブーイングの嵐。今日は白組と赤組の戦いなのに。