日本では ”クリぼっち” という言葉があるようだが、イタリアでもクリスマス、お正月を一人で過ごす人たちがいる。私にも経験があるが、別に寂しいわけではないが、なんとなく人恋しくなる日なのだ。そして、他人に優しくありたいと思う日でもある。
クリスマスに限らず、南イタリア・ナポリでは、他人を思いやる素敵な習慣がその昔あった。
“ Caffe sospeso “(カフェ ソスペーゾ)という習慣だ。
イタリアがとても貧しい時代であった第二次世界大戦中に生まれた習慣らしいのだが、バール(イタリアの喫茶店)で、金銭的に余裕のある人は、自分の飲んだコーヒー代の他に、さらにもう1杯分のコーヒーの支払いもするのだ。
この支払い済みの、まだ誰にも飲まれていない ”もう1杯分のコーヒー” は??
それは、コーヒーを飲むお金のない学生などが訪れた場合に、提供される。もちろん無料で。
つまり、いつか来るであろう、コーヒーを必要としているが、十分なお金がない客のために「保留」(=sospeso、ソスペーゾ)しておくという仕組みなのだ。
知り合いの友人も、学生時代に、「今日のカフェ ソスペーゾはまだありますか?」とバールを歩き回ったとか。
この習慣は30年くらい前まではあったらしいが、今はほとんどなく、この習慣が生まれたナポリですら現在はないのだそうだ。
貧富の差の激しいイタリア。しかも、マフィアに管轄されたナポリならではのエピソードだ。
裕福な人が、さりげなく他人を思う心遣い。
誰だからコーヒーをご馳走するというのではなく、誰かわからないが、コーヒーを必要とする人の為に、代金を前払いしておくというのが、粋で良い。
代金にしたら、100円以下のたいした金額ではないが、それを普通にできていて、素直に必要な人がそのサービスを利用できた時代。
イタリアが貧困な時代の話だが、今と比べると、心はとても裕福な時代だったように思う。
保留のコーヒー。その習慣は保留にせずに、続けたいものだ。